2013年11月8日金曜日

【フランス説話】ギンガモール【浦島太郎類話】

日本昔話として広く親しまれている「浦島太郎」だが、実は世界中に似た話が伝わっている。
今日は中世フランスに伝わる浦島っぽい話を紹介したい。


昔、現在のフランスの北西部にブルターニュ王国という国があり、
ギンガモールという騎士がいた。

ブルターニュ地方(Wikipediaより引用)

ギンガモールは美男で人望があり、また子がいないブルターニュ王の甥っ子で、
いずれは王位を継ぐ存在だった。

彼が大層モテたことは想像に難くないが、あろうことか王妃からも誘惑されてしまう。
常識人であるギンガモールはそんな誘いをかわすのだが、王妃から恨みを買ってしまった。
こういう時どうすればいいんだろwイケメンも大変だw

王妃はギンガモールを亡き者にするために、彼を「白い猪狩り」に行くように仕向けた。
白い猪とはブルターニュの森に出没するUMA(未確認動物)で、田畑を荒らしたりはしないけど、とりあえず白い。
この珍しい白い猪を求めて何人もの騎士たちが狩りに出かけたが誰ひとり帰っては来なかった。

白い猪©ネコ仮面


ある日王妃は、お城の家臣たちが列席する夕飯の時間にギンガモールと目を合わせながら
「この中には白い猪を仕留めてくる勇気のある者はいないでしょう」と言った。

王は慌てて「ダメだお。危険だお。白い猪狩りに行った家来誰も帰って来なかったお」
とその話題を遮った。

その後その話題に触れる者はいなかったが、ギンガモールは王妃が自分に対して言っているのはよく分かった。

男という生き物は困ったことに、こんな風に言われると意地でもやってやろうじゃねえかという気持ちになる。
ギンガモールもそうだった。

その晩、彼は王の寝室に赴き、どうしても聞き入れて欲しい願いがあると王に懇願した。
王はギンガモールを大変可愛がっていたので何でも言うが良いと快諾した。
何でも聞くという言質を取ってから「白い猪狩り」に行きたいと後出しジャンケンをしたギンガモールに対して、王は「ちょwwwおまwww」と何度も考え直すように促したが彼の決意は固かった。


翌朝、ギンガモールは王から借りた猟犬セッターを引き連れて、森に白い猪を求めて意気揚々と旅立つ。

セッター(Wikipediaより引用)
 
獲物を求めて森を深く分け入っていくうちに、彼は見たこともない立派な宮殿を見つけた。
城壁は緑の大理石でできており、塔は銀色に輝き、扉は象牙細工でさらに金で装飾されていた。
何かわかねえけどたぶんこの世のものじゃねえな。
中世の森は異界に通じてたんじゃね?

あまりに立派な宮殿に気を取られているうちに、彼は獲物と犬を見失ったことに気付く。
慌ててさらに森の奥地へ進んだ彼はまたもこの世ならぬものに出会う。

オリーブの木の木陰に泉があり、そこには美しい乙女が水浴みをしていた。
乙女のあまりの美しさに胸を射すくめられたギンガモは、木の下に置いてあった彼女の衣服を木のうろ(穴)に隠した。

乙女が着る服を探している間に、白い猪を仕留めて速攻で戻って彼女をナンパしようと企んだのである。裸では帰れないし。
冒頭とは打って変わって姑息なギンガモw


乙女はそんな変質者にすぐ気づき、
「ギンガモール様。そんなことをしたら警察HPの不審者情報に載っちゃいますよ。
それより私と一緒に来てください。宮殿に泊めてあげましょう」
と向こうから声をかけてきた。

ギンガモールは非常に嬉しかったが、犬と白い猪を見失ったので捕まえるまで戻れないと断った。
乙女は「いいからついて来て下さい。3日後に犬も猪も捕まえて返してあげますから」と言った。
お前何者w

そんなこんなでギンガモールは乙女に連れられ先ほどの美しい宮殿へと入った。
宮殿には絹の上着を着た300人ほどの騎士が、彼らを出迎えてくれた。
皆それぞれ美しい女性を連れていた。

中にはギンガモールより先に白い猪を求めて旅立ち、帰らぬ人となった騎士たちもいた。
彼らはここで幸せに暮らしていたのだった。

ギンガモールは宮殿中の人々に歓迎された。
御馳走とハープやヴァイオリンの演奏。美しい乙女たちの歌声。
まるで竜宮城。いやタイやヒラメの舞踊りよりよっぽど洒落乙wさすがおフランスw

ギンガモールは夢のような日々を過ごしたが、3日目に犬と猪をもらって一旦帰ろうと思った。
この不思議な体験を王に報告してから、また恋人の元へ戻ってくるつもりだった。

しかし乙女が言うには
「実は元の国では300年経ってます。王も家臣たちも町ももう無いです。戻っても無駄です」
とのことだった。

しかしそんな話は信じられないギンガモールは一旦戻ると言って聞かなかった。

乙女はギンガモールの固い決心に折れて
「仕方がありません。でもこれだけは約束してください。国に帰るのに川を越えたら、またここに戻ってくるまでどんなに喉が渇いても、どんなにお腹が減っても何も口にしてはいけません。さもないともう会えなくなってしまいます」
と忠告して彼を国に帰した。

ギンガモールは馬を引き、犬を連れ、猪の首(重いので首だけにした)を担いで船で元の世界に帰るために川を渡った。

川を渡り切って馬に乗って森から出るために駆けたギンガモールだが、
森は3日前に比べて生い茂って全く見覚えがない場所に変貌してしまっていた。

困惑した彼は、通りがかりに木を切っていた炭焼きの男に道を尋ねてみた。
炭焼きは言った。
「お尋ねの王様はもう死んでるぞ。300年くらい前だな。今は城も町もねえよ。そういや猪を求めて王の甥が森に入って行って帰って来なかった伝説もあるな」

ギンガモールはようやく自身の置かれた状況を悟り、伯父である王を失った悲しみに打ちひしがれた。
彼は炭焼きにその甥は自分であること、森で美しい乙女に出会い宮殿で楽しい3日間を過ごしたことを打ち明けた。そして猪の首を渡し、この話をこの土地の人々に話して欲しいと頼んだ。

伯父の住んでいた城を求めたのか、はたまた愛しい恋人の元に戻ろうとしたのかは分からないが、彼は長い時間森の中をさまよった。

腹が減った彼は、あろうことか木に生えていたリンゴを3つ口にしてしまう。
恋人の忠告に背いてしまったのだ。

リンゴを食べ終わった彼の体に300年の歳月がのしかかる。
力が抜けて老人になってしまった彼は落馬した。

そこへ侍女を伴った乙女が馬に乗って駆けつけてきた。
彼女は言いつけを守らなかったことを非難し、
弱った彼を馬に乗せ、犬も連れて船で川を渡って行った。

一部始終を見ていた炭焼きは猪の首を持ち帰り、あちこちでこの話をした。
やがて評判を聞きつけた王(この時代の王様だろう)に猪の首は献上され、
この話は長く語り継がれることとなったのである。


非常にどうでもいいけど岩手県に銀河モールって商業施設があります。


〈参考資料〉
中世ヨーロッパの説話―東と西の出会い (中公文庫)

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